よくある話

 大阪在住のXさん。30年前にJ社からお金を借りたことがあった。本人も昔のことで全部返した筈だけど、程度の記憶しかない。それが今年になってある日、自宅の郵便ポストに運送会社の名前で不在通知が入っていた。Xさん、何の疑いもなく、通知に書いてある電話番号に電話した。若い担当者が電話に出て、伝票を確認するに必要だとのことで、Xさんは自分の固定電話、携帯電話の番号を教えてしまった。そうしたところ、突然口調の荒い人間が電話に出てきて「おたく、J社という会社知っているよな。そこから借りてそのままになっているだろう。」とまくし立てた。Xさん、利息込みで借金が百万円以上に膨れ上がっていると告げられ、びっくり。
 それで慌てて、うちの事務所に相談の電話をされた。相手の大阪市西成区のコスモ企画という会社。
 こんな会社に対してでも、うっかり少しでもお金を払ったりすると、債権譲渡を承認した、時効援用権を喪失したなどと言ってくるので注意が必要。以前も同様の手口の業者が、びっくりしたことに訴訟をかけてきたことがあった。訴訟には勝ったが、くれぐれもご用心。
 因みに、時効債権の譲渡を、異議なく承諾したからといって、責任を負うものではない。というのは、譲受人がこの債権が時効にかかっていると知らなかった場合は、債務者が異議なく承諾したから、自分は払ってもらえると信じていたと抗弁することは可能である。しかし、通常譲受人が時効にかかっているとは知らなかったということはありえない。