最高裁平成23年7月14日判決

最高裁新判決

 最高裁は平成23年10月14日、次のケースで、基本契約に自動更新規定があることを理由に、取引の一連性を認めた原審判決を、平成20年1月18日判決を引用し、破棄差し戻した。

取引の概要

 本件当事者は、以下のとおり、継続した金銭消費貸借取引を行っており、それぞれの取引開始時点において、基本契約の締結があった事案である。なお()内は次の取引までの中断期間である。
 取引1 昭和56年4月10日〜昭和58年12月24日(549日)
 取引2 昭和60年6月25日〜昭和61年11月27日(785日)
 取引3 平成元年1月23日〜平成10年4月6日 (854日)
 取引4 平成12年8月7日 〜平成21年3月9日

最高裁判決の内容

 最高裁判決は言う
「原審は,上記事実関係の下において,基本契約1ないし3には本件自動継続条項が置かれていることから,基本契約1に基づく最終の弁済から基本契約2に基づく最初の貸付け,基本契約2に基づく最終の弁済から基本契約3に基づく最初の貸付け及び基本契約3に基づく最終の弁済から基本契約4に基づく最初の貸付けまでの各期間のいずれにおいても,2年ごとの契約期間の自動継続がされていたとして,上記各期間を考慮することなく,基本契約1ないし4に基づく取引は,事実上1個の連続した貸付取引であり,基本契約1ないし3に基づく取引により発生した過払金をそれぞれ基本契約2ないし4に基づく取引に係る借入金債務に充当する旨の合意(以下「本件過払金充当合意」という。)が存在すると判断して,原告の請求を認容した。」とまず原審判決を要約する。
 しかし、最高裁判決は、平成20年1月18日判決を引用し、基本契約が新たに締結された場合、取引は原則分断となるとし、次のように判示して、平成20年最高裁判決が挙げる「一連貸付と評価するのに必要な6要件」について判断していない原審判決は違法だとする。「しかるに,原審は,前記事実関係によれば,基本契約1に基づく最終の弁済から基本契約2に基づく最初の貸付け,基本契約2に基づく最終の弁済から基本契約3に基づく最初の貸付け及び基本契約3に基づく最終の弁済から基本契約4に基づく最初の貸付けまで,それぞれ約1年6か月,約2年2か月及び約2年4か月の期間があるにもかかわらず,基本契約1ないし3に本件自動継続条項が置かれていることから,これらの期間を考慮することなく,基本契約1ないし4に基づく取引は事実上1個の連続した取引であり,本件過払金充当合意が存在するとしているのであるから,この原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,前記特段の事情の有無等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。」

1年ルール

 東京地裁の裁判官を始め、多くの裁判官が次のように一連か個別かを判断している。第1取引、第2取引間に分断があったとした場合、第2取引開始当初において基本契約の締結が無い場合は一連、基本契約の締結がある場合も取引の中断期間が1年以内であれば一連。本件判例は、この実務上の取扱いに沿ったものと言えるかもしれない。