中国の外洋政策に米国が反発

2プラス2

 6月21日、米国務省で「日米安全保障協議委員会(2プラス2)」が4年ぶりに開かれた。協議には、日本側から松本外相と北沢防衛相、米側からクリントン国務、ゲーツ国防両長官が出席した。
共同声明では、アジア太平洋地域の安全保障環境が「ますます不確実になっている」と指摘。地域・世界の安定に向けた取り組みを示す共通戦略目標として24項目を提示した。
 24の細目の中には「航行の自由の原則」が明記された。中国が南シナ海を「核心的利益」と位置付けていることに対し、「南シナ海の航行の自由は、米国の利益」(クリントン国務長官)とする米政府の姿勢を明確にしたものだ。
 戦略目標には、日米の枠組みのほか、日米韓、日米豪、さらに東南アジア諸国連合ASEAN)との安保協力も盛り込まれたが、「中国包囲網」のとも言える。

クリントン、フィリピン外相と会談

 6月23日には、23日、米ワシントンでクリントン国務長官とフィリピンのデルロサリオ外相が会談。フィリピンを含むASEAN各国と米国が協力して、中国に対抗していくことを確認した。フィリピン海軍は28日から、フィリピン近海で米海軍と合同軍事演習を計画。米国の力を背景に中国と向き合う姿勢を強めている。
 クリントン長官は会談後の記者会見で、中国側の艦船が南シナ海で、フィリピンやベトナムの艦船の活動を妨害する事案が最近、増加していることについて、「地域の平和と安全への懸念を引き起こし、緊張を高めている」と指摘。「軍事力の行使や、領有権を強化するため軍事的脅威を使うことには反対する」と述べ、関係国に自制を求めた。

ベトナム海軍とも救護演習

 AFP通信は6月23日、米国とベトナムの両海軍が来月、ベトナム・ダナン沖で交流活動を行うと報じた。期間は約1週間の予定で、米海軍からは駆逐艦や海難救助船が参加する見通し。医療協力や海難捜索・救助活動の検討が行われるという。同通信によると、米海軍報道官は「戦闘訓練はない」とし、領土論争とは「まったくつながりがなく、時期も偶然一致しただけだ」としているが、この数日の動きを見ると中国をけん制した動きであることは明らかだろう。

外交的失点を生み出す理由

 尖閣諸島のときもそうだが、最近中国の大胆な軍事的行動が周辺国との緊張を誘い、自ら中国包囲網を作ってしまっている。外交的には失点だが、これは今の中国の内政と無関係ではない。中国は経済成長を遂げているが、儲けているのは中国共産党の幹部連中、地方政府上級管理、国営企業の上層部。かつての資本家階級に共産党幹部が納まっただけというのが実態だ。そのため、低所得層、農民層の政府に対する不満は大きい。そうなれば一番頼りになるのは、中国人民軍をである。中国人民軍は国の軍隊ではない。中国共産党の軍事部門であり、中国共産党中央軍事委員会の指揮下にある。
 中国共産党がいかに強大とは言え、13億人という人民の波に飲まれたらひとたまりもない。集団抗議行動の頻発する中にあって、軍の機嫌を取らざるを得ない。また、中国は集団指導体制に有り、国家主席の地位は思われているほど強くは無い。大統領と言うより首相に近い。さらにその下にある温家宝など、お飾りである。中国共産党中央政治局には軍出身者も2名おり、来年の国家主席の後任人事にも軍の支持は不可欠だ。