IEA石油備蓄放出要請 OPECとの力相撲の始まりか

IEA、加盟国に石油備蓄放出を要請

 国際エネルギー機関(IEA)は6月23日、日米など加盟28カ国に義務づけている原油や石油製品などの石油備蓄を放出する方針を示した。IEAは今回の放出をリビア情勢の混乱を受けた供給減に対応した措置としているが、これは建前。実際には原油の需給はひっ迫していないからだ。[パリ/ワシントン 23日 ロイター]

IEAの意図は価格操作

 IEAの規則上は、石油備蓄が供給不足の場合に限られるため、リビアを理由にしているが、実際の意図は、原油価格の引き下げ、投機筋に対するけん制である。実際、IEAの発表を受け、北海ブレント先物は約5%安の1バレル=108ドル近辺に下落。米原先物も5%近く下げて91ドルを割り込み、2月以来の低水準となった。

OPECへの対抗措置

 OPECが6月8日の総会で増産を見送ったことがこの背景にある。欧米との協調路線をとるサウジが増産を提案したが、他国からの異論が相次ぎ、結局提案は否決された。IEAはこれに強く反発した経緯があった。米は石油備蓄の放出を検討。IEAの動きは米の動きを援護する意味もあった。

中東の民主化の影響

 中東の民主化は、原油高を招きかねない。というのも、サウジが増産を提案し、原油価格の安定を図るのは、米国に恩を売って、自国の非民主的体制を守ってもらうためだ。いわば民主化運動が起きたときのための用心棒代だ。しかし中東諸国が民主化すれば、用心棒代は不要になり、原油価格は上昇する。

OPECは反発

 IEAの今回の措置は、このOPECの動きを封じるために、石油備蓄を価格操作のための武器として使ったものである。当然OPECは反発。イランなどOPEC加盟国の代表筋も備蓄放出は正当化できないとし、ある代表筋はロイターに対し「このような市場への介入をどう正当化できるのか分からない」と語った。

その後の原油価格(追加)

 IEAの石油備蓄放出策で、6月23日はWTI期近物が前日の95ドル台から90ドルに急落したが、30日には95ドル台に戻り、早くも息切れとなった。1日200万バレルという放出量は世界消費量の約2.3%であり、それ自体は十分な規模だが、30日間の限定措置のため、足元を見られたということだろう。今回の放出は米政府の要請とのことだが、米国も自分の頭の上の蠅(債務上限)を追ったらどうか。原油価格についてはそちらの方がよほど重要だと思うのだが。