Jトラスト 武富士入札撤退

Jトラスト撤退

 4月8日、ネオライン系のJトラストが、経営破たんした消費者金融武富士のスポンサー選定プロセスから撤退すると発表した。スポンサー選定の入札は3月31日に行われており、今回のJトラストの撤退はいったん入札した後に行われており、異例と言っていいだろう(4月8日付ロイター)。
 Jトラストの担当者は撤退の理由について、「選定プロセスが不透明だった」としている。同社は応札価格が310億円だったことも明らかにしている。武富士の資産は、本社不動産のほか、貸付債権も700億円ある。しかしこの700億円の回収には、人手も金もかかり、この中には債務整理案件も含まれ、かつ、今後の貸し倒れも考えると、この310億円という金額も低額とはいえない。

撤退の理由

 もし、他社の入札価格が310億円を下回るとしたら、なぜネオラインが撤退しなければならなかったのか、との疑問を生ずる。無論仮定の話である。しかし、今後の武富士の業務体制を占う意味でも、この仮定のケースを検討しておくのは有益であろう。
 もし、この仮定が現実のものだとしたら、ネオラインの企業体質が問題にされた可能性がある。というのは、こう考えるからだ。武富士の破綻で、多くの借主が支払いを止めてしまっている。そのため、期限の利益を喪失して一括請求の対象となっている債権が多い。破綻後分割和解も受け付けないため、弁護士らが介入した案件も和解が進んでいない。もし、武富士がネオライン傘下となったら、相当過酷な回収が行われるのではないかと危惧するのは、私だけではないだろう。
 先般のブログでは、そうした危惧を述べるとともに、裁判所の英断を望むとした。ひょっとして、裁判所の英断があったのか。無論、仮定の話ではあるのだが。

追加

 4月9日付日経朝刊によると、韓国の消費者金融A&Pフィナンシャルが11日以降に優先交渉権を取得。月内にもスポンサー契約を締結するという。
 韓国では、消費者金融は中小企業が行っていたが、日本国内で行き詰った消費者金融が韓国に進出。あの三和ファイナンス(現SFコーポレーション)も進出し三和マネーとして、大手2位につけている。そして1位がこのA&Pフィナンシャルなのである。
 このA&Pも日系企業だが、日本国内の大手、準大手系でもなく、ノウハウは乏しい。A&Pは貸付残高では業界トップだが、09年度決算の純利益では2位の三和マネーに抜かれた。三和マネーは純利益増加の最大の要因は貸付規模が増えたにもかかわらず、延滞率など債権管理がしっかりとされているためとされる。武富士の債権管理手法、システム等を入手し、企業体質を変えようとしているものと思われる。思えば、武富士の管財人が「武富士ののれんを評価して行くれるところ」を選ぶと言っていた、そこにも合致している。
 因みに韓国は4割近い利息を取ることが許されており、大手消費者金融7社の総資産純利益率は9.44%で、銀行の0.39%よりもはるかに良好で、消費者金融も韓国では「この世の春」を謳歌している。
(2011.4.11)