中国の携帯電話爆発で男性死亡 電気自動車でも問われるリチウム電池を扱う難しさ

携帯電話の爆発事故

 中国広東省広州市で、09年12月30日、20歳の男性が左胸のポケットに入れていた携帯電話が爆発し、男性が死亡した。中国では携帯電話用の電話のコピー品が出回っており、中には「長時間使用」をうたった大容量のものがある。

携帯電話に使われるリチウム電池

 リチウム電池は正式にはリチウムイオン二次電池といわれる。二次電池とは蓄電池の正式名称である。リチウムイオン二次電池は、水溶性電解液を使用するニッケル・カドミウム蓄電池などと異なり、有機溶媒を使用しているため高温で発火する危険性がある。このため、これらを見越した上でリチウムイオン二次電池には多重の安全対策が施されている。
 外から強い力を与えると発火爆発する。外力を与えなくても、電池と機器の相性が悪ければ発火事故を起こす。中国の事故もリチウム電池が原因だろう。リチウム電池の爆発が撮影された映像がYouTubeにあるので見てほしい。その爆発力の勢いは想像以上だ。
http://www.youtube.com/watch?v=AKBaaeFMK9k
http://www.youtube.com/watch?v=jbohZJ4NIzg&feature=related

ソニーリチウム電池が起こした発火事故

 ソニーが06年10月、自社製のノートパソコン用充電池(リチウムイオン電池)について、リコール(自主回収・無償交換)の実施を発表し、過熱や発火の不具合が指摘されたソニー製充電池のリコール対象は800万個を超えた。
 同年8月に米デルが自主回収が発表。ソニーは、過熱や発火などの不具合は、デル製のパソコンとの相性(急速充電の点)が原因としていたが、国内他社メーカーも次々自主回収を開始。ついにソニー自身もリコールを余儀なくされた。

電気自動車はリチウム電池を使用

 現在電気自動車の開発競争が激しいが、電気自動車はリチウム電池を利用している。当然危惧されるのが発火事故だ。もし爆発事故でも起ころうなら、ダメージは計り知れない。
電気自動車の登場は、自動車産業の国際的水平分業をもたらす可能性ある。そうなると三洋電機を吸収し電池事業を強化したパナソニックや、オバマグリーンニューディール政策によってシリコンバレーが自動車事業を始めるかもしれない。
※この点詳しくは08年11月23日付「電気自動車の登場で始まるトヨタの落日、パナソニックの夜明け」を参照してください↓
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20081123/1227448761

天然資源としてのリチウムについて

 このリチウムも石油と同じ、限りある天然資源である。このため今後世界的にリチウム争奪戦が繰り広げられることになるだろう。
 05年における世界の金属リチウムの生産量は2万1400トン。うちチリ8000トン、オーストラリア4000トン、中国2700トン、ロシア2200トン、アルゼンチンが2000トンである。金属リチウムはおもに塩湖で産し、天然中には炭酸リチウムとして存在。埋蔵量は、世界全体で1340万トン。未開発のボリビアが540万トンで、現在の主要生産国のチリの300万トン、アルゼンチン200万トンを抜き、ダントツの世界一である。世界全体の埋蔵量は約1300万トンと言われ、ボリビアは世界全体の埋蔵量の41%を保有していることになる。
 しかしボリビアのモラレス大統領は、石油、石炭を国有化、このリチウム資源も国有化したい考えだ。そのため海外鉱業資本も手を出しかねている。しかし次世代の燃料電池が開発されれば、リチウムの価値は下がるはず。いい加減、国有化で頑張っていると宝の持ち腐れで終わってしまう可能性もある。