鳥インフルエンザワクチン備蓄3000万人分、タミフル備蓄2500万人  あとは死ねってことか?

全人口分ないプレワクチン

 09年4月までに作られるインフルエンザ用ワクチンは3000万人分しかない。これは現在の鳥インフルエンザの抗体をもとに作ったもので、鳥インフルエンザが発展してできる新型インフルエンザに効くかどうかは分からないが、有効な可能性があるとされている。しかし、それでも、人口の4分の1にしか行き渡らない計算だ。厚労省の発表では社会機能維持者を優先するとし、その余のワクチンの接種を誰が受けられ、誰が受けられないかは決まっていない。むしろ決めようがないと言って良い。ところで優先して接種される社会機能維持者とは、医療従事者・警察職員・自衛隊員、首相・閣僚・知事・市町村長・議員、電気・ガス・水道・金融・郵便業者だ。国会議員が優先して受けられるというのでは、親身になれないのではないか。自分らにも優先権がないと分かればもっと必死になってワクチン備蓄に努めるのではないか。
 与党プロジェクトチーム(川崎二郎座長)は08年6月20日、新型インフルエンザ発生に備えた総合的な対策をまとめ、新型インフルエンザ・ワクチンを若年層などに優先的に接種する方針を盛り込んでいるので、プレインフルエンザ・ワクチンについても同様の方針が決められるかもしれない。免疫力の活発な若年者のほうが、ワクチンの有効性が高いからという意味もあるだろうし、その後国家が生き残るのに若者を残したほうが有利だという究極の判断もあるのかもしれない(沈没船でも子供が優先されるでしょう)。
 民主党案は、希望者全員にプレワクチンを接種する体制を整備するとしている。こちらの方がまっとうな考え方だろう。4人の中で、一人だけワクチンを受けられ、他は受けられないという事態を想像するだけでおそろしい。
東京新聞09.1.3朝刊)
 08年12月22日付ブログでも紹介したが、ダチョウの卵を使って、新型インフルエンザの抗体を大量生産する技術が実用化されようとしている。開発したのは京都府立大学の塚本康浩教授。新型インフルエンザの出現後でも、ダチョウが3000羽もいれば、半年で日本の人口分の抗体が作れるという。しかし問題なのは彼が、獣医学者であり、京都府立大学という一地方国立大学の学者だということだ。そのため、東大卒、京大卒が重鎮を占める医学界は必ずや採用しないよう努めることだろう。政治家は大英断をして彼の研究を応援してほしい。なお同教授は日本では相手にされないため、海外の企業と開発を進めるそうだ。
http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20081222/1229938162 

タミフルもたったの2500万人分

 現在有効と考えられているのはタミフルくらいしかない。タミフルは、スイスの製薬会社ロシュが製造、中外製薬が販売している。八角という中華料理でよく使われる香辛料が原料だ。体内でインフルエンザウイルスを増やさないようする薬のため、インフルエンザの症状が出てから48時間以内に服用しないと効果が落ちてしまう。インフルエンザに必ずタミフルが効くかどうかは不明だ。現にインフルエンザA型、B型には効くが、C型には効かない。しかし効く可能性がある以上、これも備蓄しておく必要がある。何せワクチンの製造には6ヶ月程度かかるため、いざ流行したら、しばらくはタミフルで治療するしかないのである。
 しかしこのタミフルも2500万人分しか備蓄がない。前記与党プロジェクトチームの方針では、タミフルの備蓄量を大幅に増やす、タミフルが効かないウイルスに備え「リレンザ」も一定割合確保する、としている。しかし全員分とは明言していないし、タミフルが効かなかったらリレンザの備蓄はわずかしかない。
日本経済新聞08年6月21日朝刊)
 やはりタミフルリレンザも国民全員分備蓄すべきだ。

64万人死亡は最悪ではなく、最良のシナリオ

 厚労省は、最悪64万人が死亡するとしている。すなわち国民の4分の1の3200万人が感染。うち2%が死亡するというシナリオだ。しかし致死率2%というのは甘すぎる。現在鳥インフルエンザに感染した患者の致死率62.9%。もっとも、これらの感染は、鳥から人への感染であり、人から人への感染力を持つ新型インフルエンザはまだ現れていない。そのため致死率も不明だ。米国では、現在の鳥インフルエンザの高い致死率から推定して、感染者の致死率は20〜40%と予想されている。厚労省が参考にしている新型インフルエンザはソ連型、ホンコン型といった致死率の低いインフルエンザを参考にしたものであり、今流行が心配される鳥インフルエンザでは致死率がこれよりはるかに高くなる可能性がある。
 1月17日封切り予定の感染列島という映画がある。この映画では、最悪の可能性を前提に作られた映画だ。ぜひ見てほしい。インフルエンザという名前からは想像もつかない、高熱、嘔吐だけではすまず、痙攣、多臓器不全という急性症状で、死に至る。今の鳥インフルエンザと同様のものが起こりうるとすれば、これは現実のものとなる。致死率2%というのは、以前のホンコン型、ソ連型で収まればその程度で済むかもしれないという、希望的観測にすぎない。
 映画感染列島のHPは↓
http://kansen-rettou.jp/
※町田の病院での集団感染 これが新型インフルエンザだったらどうする。http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090120/1232420825(09.1.21追加)
※国産H5N1プレワクチン 本当に効くのか http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090407/1239120577(09.4.12追加)