今日の新聞から 09年4月1日

昨日の新聞からになってしまいましたが、、、

日経平均1年で35%下落

 09年3月31日の日経平均は8109円53銭。08年3月末日の1万2525円54銭に比べ、35%のダウンだ。しかし、09年3月10日には前引け間際に7021円28銭まで下げ、7000円割れかという時期もあったのだから、よくぞ3週間でここまで上がってきたというべきだろう。しかしこれは日本株の実力というよりは年金マネーがジャブジャブ注ぎ込まれた結果ではないか。三菱UFJ、みずほが最終赤字とも伝えられるが、8000円を保ったということでホッとすべきところなのではなかろうか。
※ 外人売りに対する年金マネーの孤軍奮闘 http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090322/1237713868

世銀今年度成長予測

 世銀は世界全体の09年実質成長をマイナス1.7%と予測。米は▲2.4%、ユーロ圏は▲2.7%、中国は6.5%増、インドは4.0%増、ロシアは▲4.5%。
 OECD予測はそれをさらに下回る。世界全体は▲2.7%、米は▲6.6%、ユーロ圏は▲4.1%、中国は6.5%増、インドは4.3%増、ロシアは▲5.6%。
 ちなみにわが日本は、世銀が▲5.3%、OECDが▲6.6%と予測。ダントツに悪い。自虐するしかないね。

昭和シェル、プラズマパネル工場を日立から買収

 昭和石油シェルは、日立製作所からプラズマパネル工場を買収することになった。昭和シェルの目的は、当然プラズマテレビを作ることではない。太陽光発電パネルを作ることだ。大型ガラス基板に薄膜や電極を取り付けるプラズマテレビの生産工程は、太陽光パネルの生産工程に似ているため、このような転換が可能になるのだ。
 産油国石油化学工業設備を持つようになるため石油化学工業は落ち目、また今後自動車台数も減り、燃費向上も進むとなるとガソリン卸売も落ち目になる。昭和シェルとしては業態変更を猛スピードで進むことが求められている。
 http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20081207/1228648256
 他方の日立。電機業界で最高の赤字決算を上げている。薄型テレビは現在サムソンの一人勝ち状態。もはや日立に薄型テレビを作る体力はない。日立は徹底的な構造改革を果たし、成長分野に資本を集中しようとしている。これまで日立は、「日立時間」と言われるほど、経営の決定に時間がかかり、時機を逸することが多かったが、今回の工場売却を見ると、日立時間は終わりを告げつつあるのかもしれない。
 http://d.hatena.ne.jp/yamada-home/20090228/1235820107

楽天提携断念 TBS全株売却

 楽天は発行総数の19%近くを保有。さらなる大量買付をちらつかせながら、TBSに経営統合や事業提携を持ちかけていた。しかしTBSは提携に消極的、持久戦になった。
 ところがここで予想外の事態が発生。方双方が改正され「認定持株会社」制度ができたのだ。この法律ができたのは地デジの影響が大きい。地デジで大変なのはテレビの買替を迫られる家庭だけでない。地デジに変わることで、放送局も放送設備を地デジ用に一新しなければならない。しかも最近の経済危機である。不況は企業の3K、広告費、交際費、交通費の大幅削減をもたらす。金がかかる時期に、広告収入の激減が重なってしまったのである。まだキー局はいいが、大変なのは経済力のない地方局である。地方局としては、在京キー局の資本的傘下に入って、財政不足による経営危機を脱したい。しかし放送法は、マスコミが特定企業の独占化に置かれるのを防ぐため、持株会社は認められていなかった。そのため「認定放送持ち株会社制度」が4月1日施行の改正放送法で導入される。しかし、ここで楽天にとって大きな問題が起こった。改正放送法が、特定の企業が放送局を支配することを恐れ、1株主の出資比率を33%以下に限ったのだ。このため、楽天がいくら頑張っても、支配株主になれなくなったのだ。
 楽天は、放送法が定める規定を利用し、TBSに現在保有の全株の買取を請求した。
 これだけを見ると、TBSの防衛戦勝利ということになりそうだが、そう簡単ではなさそうだ。TBSも広告不況で経営は厳しい。楽天の株買取資金をどうやって用意するのか。楽天にとっては塩漬けになっていた資金を、他の成長分野に回せるのだから、今回の法改正、楽天にとって良い方向なのではないか。

財政支出最大の10兆円

 麻生首相は、21日追加経済対策を4月中旬までに取りまとめる方針だが、財政支出規模は10兆円を超える見通しだ。当然この財源は、赤字国債増発でまかなうことになる。09年度の赤字国債発行額はすでに33兆円、さらに10兆円を増発するのだから。
 1日付日経によると。「増発額が10兆円を超えると市場での安定消化が難しくなる」という声が財務省にあるそうだ。日銀の国債買入も通貨発行高が上限。もう余力は限られている。ここのところ積ん読状態になっていた、日本国債の未達(売れ残り)を扱った、幸田真音の「日本国債」をそろそろ読まないとと思っている。

中国版ナスダック5月開設

 最近、なぜか上がり続ける中国株。年初から3か月で3割も上がり、世界主要市場の中で独歩高。そうした中で、中国版ナスダックが5月に開設されるという。現在8社が上場を控えているそうだが、実際の上場は夏以降とのことだ。上場条件は以下の通りだが、中国新興企業の決算書類をどう信じろというのだろうか。

  • 3年以上の営業実績 短か!
  • 2000万元(2億8000万円)以上の純資産
  • 2年連続で増益かつ利益合計が1000万元以上or売上高が5000万元、利益が500万円かつ2年間の増収率が30%以上
途上国貿易支援に、日本2.2兆円

 世界はどんどんサミットをやった方がいい。麻生さんがどんどん手形を切るからね。毎週やったらどうだろう。日本は破産だな。麻生さんのやっていることは、自宅が火の車だというのに子どもから借金をしてまで村のお祭りに寄付をしようというようなものではなかろうか。人の頭の蝿を追うより、自分の頭の蝿を追った方がいい。

建機出荷額57%減

 日本建設機械工業会の31日発表では、建設機械出荷額は前年同月比57%減と最大の下げ幅を記録した。
 先週の日曜日NHKの金融危機後の世界を扱う番組でドバイの現状を見たので、なるほどと思った。ドバイは金融危機までは世界一のホテルを建てたり、人口島を作って分譲したりと、大変な建設ラッシュだった。このため建設機械の3分の1がドバイにあると言われたほどである。現在ドバイでは巨大プロジェクトが次々に中止に追い込まれている。このため建設機械がだぶついている。このためドバイでは建機のマーケットもあり、半値でどんどん取引されている。そうした機械は欧米に行く。何も高い金を出して新品を買う必要はないということなのだ。

IPS細胞創薬支援を研究

 東レ第一三共子会社など12社は、京都大学などと組み、IP細胞を使った創薬支援技術の開発に乗り出す。
 新薬開発では臨床試験(治験)に進み、市場に出るのは8%に過ぎない。残りの失敗の多くは副作用のためで、副作用がなくなれば開発費用が削減できる。iPS細胞から作った心臓細胞をつかて副作用の手続きをすることも可能になる。
 政府は5年間で55億円の助成金を出すことになっている。

イスラエル外相にリーバーマン

 イスラエル新政権がまもなく発足予定だ。右派政党リクードのネタニヤフ党首が首相となっての、6党連立政権だが、連立には極右の「わが家イスラエル」、ユダヤ原理主義の「シャス」が参加し、わが家イスラエルリーバーマン党首が外相になる予定だ。
 リーバーマンは「パレスチナ人を陸地から追い払い、地中海でおぼれさせるのが一番だ」と主張していた人物で、パレスチナ国家承認の可能性は遠のいたと言って良いだろう。こうした連立政権の中に中道左派労働党が入っているのには、一瞬違和感を感じる。しかし、労働党がいなくても残りの5党で過半数を取れるため、労働党は欧米向けの「僕たちパレスチナの人たちのことをちょっとは考えてますよ」といった程度のお飾りにすぎないとみるべきだろうか。

センバツ花巻東高校準決勝へ

 菊池が本当にいい。150キロ台の速球のコントロールも良いし、スライダーもあれば、緩いカーブもある。投げているテンポもいい。ただあんまり投げられると、肩が心配になる。31日の準々決勝で、花巻東南陽工と対戦。6回まではサードの選手がマウンドに立ってくれたので、やや安心。菊池は「次はたぶん先発だと思うので肩が壊れてもいいから最初から飛ばす。岩手のためにがんばる」とのこと。頼むから岩手のために頑張らないで、、
 私にとっては残念なことに早実は5対4で21世紀枠の利府に敗戦。残念!

GM 破産法11条も

オバマワゴナーを首に

 ワゴナーワゴナーCEOは27日、政府の自動車作業部会のスティーブン・ラトナーから辞任を求められ、結局辞任した。要はオバマに首にされたということだ。代わってヘンダーソンC00が30日CEOに内部昇格した。

GMの果たすべき存続条件

 米政府がGMに存続条件として、3月末までに、債権者と交渉して無担保債務を3分の1に圧縮し、残りの債務は株に転換するよう、UAW=全米自動車労組と交渉して退職者向け医療保険の負担200億ドルを半減し、半分を株式でおさめるよう、求めている。しかし3月末時点で、達成できなかった。オバマはGMにもう60日、クライスラーには30日の猶予を与えた。
 債務を3分の1にするだの、2年前約束したばかりの保険財政への供出を半分にするだの、どれも無茶な交渉である。相手に「ここでYESと言えなかったら、こいつは破産を申請するかもしれない」と思わせなければ、こういったハードな交渉はまとまらない。その点、ワゴナーは自身が破産法申請には大反対だった人物。そのため、債権者もUAWも、ワゴナーが破産のカードを切らないだろうと思っていたから、ゲームを降りなかったのだろう。

新CEOは破産法申請も視野に

 新CEOのヘンダーソンは、自分の役割を理解している。政府が与えた60日の猶予期間について、「(破産法を活用するかどうか判断するのに)それだけあれば十分」と答えている。ここでいう破産法申請は、破産法11条=新チャプターイレブン=日本でいう民事再生だ。

技術のないGM

 GMは、必要な技術は金で買う、という戦術でこれまでやってきた。しかし赤字が続き、金で買う余裕もなくなった。鳴り物入りの電気自動車「ボルト」はリチウムイオン2次電池を使用しているが、この電池を供給しているのは韓国企業のLG化学。電気自動車の心臓部までが他の企業のお世話になっている。GMは既にセットメーカー化しているのかもしれない。環境技術開発では、トヨタから1世代以上遅れていると言われている。
 GMが使用しているのはリチウムイオン2次電池。トヨタプリウスが電源に使っているニッケル水素電池に比べ、その次世代の電池だ。その先にあるのが燃料電池だが、燃料電池の実用化はまだまだだ。GMが車に載せているリチウムイオン2次電池がどの程度のものか分からないが、リチウム自体が希少金属であり、その部分でかなりのコストアップがあるのではないか。
 ただ、自動車産業が水平分業可能な産業であるとしたら、GMが独自の技術を持つ必要はないのかもしれない。そういう意味では時代の先端を行くやり方だったのかもしれない。
 なお日産はハイブリッド自動車によらず、エンジンや周辺部品の改善により、燃費の向上を図るという。

最近平成21年1月22日最高裁判決を理由に過払金利息を払わない業者が増加中

訂正

 過払金も返還しなければ、他の債務と同じで、利息が発生する。この場合の利率は年5%と法律で決まっている。例えば、10年前から過払金が発生していれば、過払金のほか、10年間分の利息が積上がっていることになる。
 ところが、最高裁平成21年1月22日判決が出て以降、一時期、取引終了時以降だけ利息を払えばいいという主張が、サラ金の中で大流行となった。しかし最高裁平成21年9月4日第2小法廷判決(平成21年(受)第1192号事件)はこれを否定。過払金発生時から利息が発生するとした。
 なので、サラ金が、H22.1.22判決だ、山口地裁宇部支部判決だとか言ってきたら、次のように書いて反論するだけでいい。
 最高裁平成21年9月4日第2小法廷判決(平成21年(受)第1192号事件)は、過払金発生時から利息が発生するとしている。被告主張は平成21年1月22日判決の解釈を誤ったものであり、独自の見解に過ぎない。(H22.4.14)もっと早く訂正すれば良かったですね。

平成21年1月22日判決

 平成21年1月22日最高裁判決が、消滅時効の起算点を、「取引の終了時」とした。この判決当事者の東日本信販は、過払い金が発生したらその都度10年の時効期間がスタートするので、過去10年分の過払い金しか取れないはず、と主張していた。しかし最高裁判決は、この見解を否定。基本契約がリボ払い方式を定めている場合、いったん過払い金が発生しても、基本契約が継続している間は過払い金請求することはありえず、基本契約が終了してから(判決は取引が終了してから、と言っていますが)時効期間はスタートするとした。そして3月3日、3月6日付最高裁判決も、この結論を踏襲している。

山口地裁宇部支部平成21年2月25日判決

 しかし、この判決は思わぬ副産物を産んだ。山口地裁宇部支部平成21年2月25日付判決である。同判決は1月22日判決を引用し、基本契約が終了しない限り「過払金返還請求権も具体化しておらず、これに対する悪意の受益者としての利息の支払いも発生していない」としたのである。この判決文の該当箇所を以下引用する。
 「過払金返還請求権の消滅時効が、、、継続的金銭消費貸借取引が終了した時点から進行すると解されるのは、過払金充当合意においては、新たな借入金債務の発生が見込まれる限り、過払金を同債務に充当することとし、借主が過払金にかかる不当利得返還請求権(過払金返還請求権)を行使することが通常想定されていないから、一般に過払金充当合意には借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点、すなわち、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借が終了した時点で過払金が存在していれば、その請求権を行使することとし、それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず、これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当であるとされるからである(前記最高裁判所平成21年1月22日第一小法廷判決参照)。そうすると、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了するまでは過払金返還請求権も具体化しておらず、これに対する悪意の受益者としての利息の支払義務も発生していないというべきである。」
 喜んだのは消費者金融各社。プロミス、アコム、CFJとがこぞって、過払い利息の発生は、取引が終了したときと主張し始めた。
 CFJは、再借入時、契約書の書換をしていようと、していまいと取引の分断を主張、さらには悪意の受益者ではないなどという主張まで始めている。

具体的な反論

 こうしたCFJの主張に対して、以下のように反論している。これは一介の一弁護士の主張なので、割り引いて読んでほしい。
第1 被告の主張(個別計算に対する反論)
 原告●、原告●は、被告との間で、それぞれ訴状別紙一覧表「取引開始日」記載の日に、借入限度額の範囲内で自由に借入することができ、返済をリボルビング方式で行うことができる基本契約を締結した。
 同原告らの各取引が、仮にいったんは完済となっても、過払金充当合意のもと、前取引から生じた過払金は、その後の新たな借入金の弁済に充当されることになる(平成21年1月22日最高裁判所第1小法廷判決、同年3月3日最高裁判所第3小法廷判決、3月6日付最高裁判所第2小法廷判決)。
第2 被告の答弁書への反論
一 平成21年1月22日付最高裁判決を前提としても、基本契約継続中は過払利息が発生しないということはない。

  1. 上記宇部支部判決は、「過払金充当合意には基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借が終了するまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはしないという趣旨が含まれている。かかる過払金充当合意の下では、金銭消費貸借取引が終了するまでは過払い金返還請求権も具体化せず、利息の支払い義務も発生しない」とする。しかし上記最高裁判決は、「同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり、過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当である」とし、取引終了前から、過払金返還請求権という具体的権利は存在し、ただその行使が妨げられるとしているにすぎない。上記宇部支部判決は「取引終了によって初めて権利として具体化する」ことを最高裁が認めているというが、論理の飛躍がある。(09年5月15日訂正)
  2. 704条の利息は、元本に対しての果実との意味合いが強い。元本を悪意で不当利得した者は、元本だけでなく、そこから生じた果実たる利息も返還すべきということで、その返還が求められている。不当利得法は公平の概念に基づいているが、まさに公平の観点からこの果実としての利息の返還が求められているのである。したがって、期限が到来しようと否と、悪意受益者に利息を収受する立場を与えるだけの理由はない。
  3. 704条は「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。」とあり、受益があれば当然に利息が発生するとの解釈が文言上も至当である。
  4. 民法575条1項は下記の通り、果実は元本と運命をともにするという法律の趣旨がみてとれる。となれば元本を返還すべきときは果実もまた返還すべきという原告主張ともつながるものである。「1 まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。」(09.5.15訂正)
  5. また、被告答弁書は9頁(3)で、被告には不法性も不当性もないから損害賠償責任を負ういわれはないとしているが、704条の利息は遅延損害金的なものではないのだから、被告の論拠は意味がない。

二 悪意の受益者
 そもそも被告は善意受益者ではありえない。
 平成17年12月15日最高裁第一小法廷判決は、概ね次のように述べている。
「リボルビング方式の場合に、個々の貸付けの時点での残元利金について、最低返済額及び経過利息を毎月 15日の返済期日に返済する場合の返済期間、返済金額等を 17 条書面に記載することは可能であるから、上告人は、これを確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずるものとして、17 条書面として交付する書面に記載すべき義務があったというべきである。 被告は悪意の受益者でないというのは、仮に、当該貸付に係る契約の性質上、法 17 条1項所定の事項のうち、確定的な記載が不可能な事項があったとしても、貸金業者は、その事項の記載義務を免れるものではなく、その場合には、当該事項に準じた事項を記載すべき義務がある。」
 この観点からみて、原告は17条書面を交付しているとは言えない。
 もっとも、仮に被告が善意受益者であったとしても、最高裁判所第三小法廷昭和38年12月24日付判決(民集第17巻12号1720号)にあるとおり、被告は消費者金融業者として過払金元本から運用利益を得ているのであるから、結局は受領後民事利息相当金を支払うべきである。善意受益者と悪意受益者の違いは、悪意受益者は現存しない元本、利息についても返還しなければならないという点にすぎない。要するに善意受益者であろうと、本来返還請求権者にあるべき元本と同様、そこから生じた果実についても、元本と一緒に返還されるべきなのである。

(従前の準備書面を訂正した個所)

  1. 宇部支部の判決の理解が不十分でした。宇部支部は、取引終了前は「過払い金返還請求権は具体化しない」としたのであって、「過払い金返還請求権の期限が到来した」とは言っていません。私の誤読で、この点誤解があり訂正しました。
  2. これに関連して、昭和38年最高裁が、期限の到来と関係なく利息が発生するとした点に触れる必要がなくなったため、この部分の引用を削除しました。
  3. 民法575条の引用に混乱した部分があったため訂正しました。 

婚姻費用分担請求権

婚姻費用分担請求権

 夫婦は互いに扶養義務を負っている。食事の際に、茶碗一杯の飯しかない場合はそれを半分に分けるくらいの、扶養義務が互いにあるとしているのだ。
 夫婦関係が悪化、妻が実家に帰ってしまったとする。妻はパートで月5万円しかない。夫は月30万円の収入がある。そうした場合、妻は夫に自分に生活費を送るよう請求することができるのである。もっとも夫婦関係の悪化が妻に一方的に責任があり、妻が勝手に出て行ったというような場合はこうした請求もできない。しかし、多くの場合、どっちが悪いと言っても水かけ論にすぎない場合が多く、たいていの場合こうした妻の請求は認められる。法的には、この場合の生活費を婚姻費用分担金といい、この支払を求める権利を婚姻費用分担請求権と呼ぶ。

今日の相談

 今日電話で夫からの相談があった。それはこういった事案だ。
 妻は横浜出身だったが、夫の住んでいる札幌市内に転居、そこで夫婦生活をスタートした。妻は北海道での生活になれず、また子どもができて育児ノイローゼにもなった。そのため妻は夫に日常的に暴力を加えていた。夫が暴力に耐えかね、離婚話を切り出し、結局妻は2歳の子どもを連れて半年前横浜の実家に帰った。その際、夫は妻から生活費を求められ、毎月8万円の生活費を送ることを約束した。夫は今も離婚を求めているが、妻がこれを受け入れる様子はない。(プライバシーの保護のため事案をかなり変えています)
 しかし、夫の月収は18万円程度。ここから月8万円の生活費を妻に送るのは苦しい。妻は最近、自分の国民健康保険料も支払うよう求めてきた。そのため、夫はそんな余裕はないということで私の事務所に相談の電話を入れてきたのだ。
 婚姻費用について月8万円という合意がいったんは成立したとしても、それが過大で夫の生活が成り立たないとなると、家裁に調停を申し立てて減額してもらうことができる。しかしこれにもいくつかの問題がある。

婚姻費用は払う必要はあるのか

 妻が浮気して勝手に出て言った場合は、夫の側に婚姻費用分担義務はないと前述した。この場合は妻の暴力がある。
 問題の第1は妻の暴力がどの程度であれば離婚原因となるかということである。育児ノイローゼということを主張されると、多少のぶった、はたいたがあっただけでは離婚原因にはならない。しかし、少ない回数でも大きな暴力があった、あるいは小さな暴力ではあったが毎日のように行われていた、となると離婚原因になってくる。
 第2は、証明できるかということ。この夫は暴力を受けたことによって生じた怪我を病院に診てもらっていなかった。暴力を理由に離婚したい人は、けがをしたらすぐ病院に行くことだ。後日その病院でのカルテ、診断書が相手の暴力の証拠になる。しかし夫は夫の妻から暴力について謝罪するメールを多数保存しているという。このメールから、夫が妻から頻繁に暴力を受けていたことが判明すれば証拠になる。
 問題の第3は、妻が子どもを連れて出ていること。妻は夫が離婚を言い出したからいたたまれず家を出たのではあるが、妻の暴力により婚姻が破たんしたとすれば、妻の生活費請求はかなり減額される可能性がある。しかし妻は子どもを連れている。子どもには責任がないから、子どもの生活費の分は減額されることはない。

国民健康保険料の支払い義務はあるのか

 婚姻費用を8万円と合意したのであれば、妻が必要な生活費はその中から賄わなければならない。車検が来ても、それも8万円の中から支払うこととなる。健康保険料もそうなる。ただ保険料を支払うという合意をしてしまうと、それは婚姻費用を増額する合意があったということになるので、その合意に拘束されてしまう。

急に大きくは下げられない

 上のような例で、本来初めから家裁に調停して婚姻費用を決めたとしたら、月4〜6万円といったところだろう。妻の暴力ということを考えると、うまくすれば養育費分の月2〜4万円で済むかもしれない。しかし一度月8万円で約束してしまった以上、婚姻費用を大きく下げることは妻の生活に脅威を与えるとして、一気にそのレベルまでは下がらないだろう。相手の暴力が認められても6万円前後の攻防になるかもしれない。
http://www.rikon-navi.jp/shiryou/santeihyou/koninhiyou/te2_1_0014.html
http://www.rikon-navi.jp/shiryou/santeihyou/youikuhi/te_1_0014.html

一番の問題はどこの裁判所に調停を申し立てるか

 しかし一番の問題は、夫が横浜家庭裁判所に調停を申し立てなければならないことだ。夫からするとそっちが出て行ったのに、なんでそっちで調停しなきゃならないんだということだろう。しかも調停となると、弁護士を委任しても本人の出席が必ず求められるし、しかも平日にしか開かれない。わざわざ飛行機代を出して、仕事も休み、ただでさえ苦しい生活がさらに苦しくなってしまう。苦労してまとまった調停で月2万円しか下がらない、あるいは全く下がらなかったとなると、費用倒れになる可能性もある。