はりぼての家で住宅ローンを組み、逮捕

不動産会社社長が逮捕

 東京都杉並区の「高額不動産」社長らが、02年、偽造した市民税の証明書などをつかって千葉信用金庫から住宅ローンを名目におよそ5000万円をだまし取ったとして、警視庁捜査2課らが、同社長らを詐欺と偽造有印公文書行使容疑で逮捕した。

多重債務者を使って荒稼ぎ

 02年5月、4人の1人が多重債務状態であったのに、歯科医を名乗り、偽造された戸籍を使い、信用情報に自己記録のない別人を演じ、信用金庫に住宅ローンを申請した。その際、納税証明書や歯科医院の源泉徴収票などを偽造した。犯人らは、02年6〜8月に2回計約5000万円の融資を受け詐取したとしている。
 によると、不動産会社社長の指示で、架空名義人が千葉市内に約1300万円で土地を購入し、業者に依頼して600万円で中身が空洞=張りぼての3階建て建物を建設した。融資担当者には「建設費は5300万円」と説明していた。共犯者は住宅ローンの名義人と、建築会社の社長だ。仲間の1人が03年9月に自首し捜査していたという。
 犯人らには、多重債務者に別の戸籍を与え身分を偽らせてローンを組ませる手口で、ほかにも余罪が3億円ほどあるとされる。(毎日新聞 2009年2月28日 23時57分、NNNニュース)

建物の写真を見たらまさにはりぼて住宅

 建物の外観は立派なのだが、中身はがらんどう。写真を見る限り、軽量鉄骨造で、四隅の壁に筋かいも入っており、建物の躯体だけはできているようだが(「はりぼて」というのは不正確かも知れない)、目に見えない基礎部分はどうなっているか、分からない。下はNNNニュースのサイトの動画だ。
http://player.streaming.yahoo.co.jp/player/player.html?s_id=s&cp_id=news&pg_id=nnn&co_id=nnn0903010001&spid=2013006344&hash=0a461dde6fff46fec1ee287ef23163ff&genre=soci&ev=1

多重債務者をローン購入者に仕立てる

 これに似た手口はよくある。たとえばこうだ。一戸建てを所有する者を買主に仕立て、建設費3000万円で請求書を作り、3000万円でローンを組む。しかし、実際は2400万円で建て、差額600万円のうち200万円だけを買主に渡し、その余は業者がポケットに入れてしまう。そういう手口である。この場合、買主役の人間も詐欺の共犯者となってしまうから注意が必要だ。
 しかし、張りぼて程度のビルを建てて、それを担保に借りるなんてムチャクチャだ。しかも、多重債務者が住宅ローンの申請をしても融資が下りないため、被害者に、架空名義の戸籍を偽造して与えてやり、別人を装わせ、収入証明まで偽装して信金に提出していたのだ。

競売されないように住宅ローンは払っていたはず。

 しかし競売されれば、嘘がばれる。おそらく住宅ローンは払っていたはずだ。その金を不動産会社の社長が払っていたか、多重債務のあった彼が払っていたかは不明である。
 多重債務者を闇サイトで集め、犯罪の実行者に仕立てる連中が後を絶たない。世の中にうまい話はない。しかしながら多重債務にある人も、溺れる者藁をも掴むで、こうした誘いに載ってしまいがちである。誘う側は、自分で手を汚したくないから、誘っている。一度話を聞いてしまうと、今さら辞めるとは言わないだろうな、と逆に脅かされてしまうので、君子危うきに近寄らずである。